「姿 井上八千代 友枝喜久夫」
白洲正子、吉越立雄 求龍堂

実家の本棚を整理することになった。
年寄りが長年使ってきた本棚には、
小説から趣味の本、ガイドブックなどがぎっしり詰まっており
さらに、そのはざまに宅配便の伝票、手紙、メモ、領収書が挟まり、
隙間には旅行の土産物や写真、事務用品と、
本以前に片づけなければならないものがいっぱい。
なんとか雑多なものを取り除いて、
ふと下段を見ると白っぽい背表紙に赤く「姿」と書かれた本があった。
赤い「姿」の下には白洲正子とある。
引っ張り出した、その表紙にはとてもきれいな書体の「姿」の文字。写真集だった。

姿

京舞の四世井上八千代と喜多流能楽師 友枝喜久夫の姿が
白洲正子の文とともに収められている。
どうやら今では絶版のようで、amazonでも本の写真さえないし
中古しか売られていない。
なので、ここにいくつか中の写真をご紹介する。
老境に至った2人の名人の舞姿の美しさもさることながら、
男女とも、きもの姿はこうありたいと思わせてくれる。




鹿の子の袖なし羽織が、柔らかく体に沿って女らしい。
袖なし羽織をこんなふうに可愛らしく着られるのは年齢のたまものだろうか。




喜多流能楽師 友枝喜久夫は、私の両親の仕舞の師匠友枝昭世師のお父様。
そのため、喜久夫師がどんなに素晴らしい舞い手であったか、よく聞かされていた。




ちんまりとお行儀のよい老能楽師と無頼な片膝立ての白洲正子。
どんなに楽しく興味深い話が交わされていたのかと想像してしまう。


神宮前の稽古場での仕舞の会。
門の木戸を開けたら、すぐ玄関という表から見ると何の変哲もないしもたやだったが、
中にはこんな稽古場が潜んでいた。私も何度かお邪魔したことがある。

本棚の整理のはずが、ついつい見入ってしまった。
さて、作業に戻ろうかと思ったら、裏表紙に白洲正子のサインを発見。


カッコいい! 自分の名前をこんなふうに書けるようになるには、
どれだけの知識と教養の蓄積があり、どれだけ腹が据わっていればいいのだろう。

やた

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