民藝の教科書2 染めと織り
久野恵一 監修/萩原健太郎 著 グラフィック社

ファストファッションが世の中に行き渡り
私なども日々そのお世話になっている一人ですが、
こと、きものに関してはそうなってほしくないと思います。
そういったお店でも「浴衣」が売られたことがあり、
若い人たちは浴衣から下駄までセットになったものを求めました。
きものへの導入部として、それもありかなとも思うのですが、
いざ自分が身に着けることを考えると「それは嫌だ」と思います。
やはり、人の手で作られたものを着たいと思うのです。

日本各地で、昔から作られ続けてきた様々な織りや染めの布には
私たちでも少し頑張れば手が届く価格のものだってあります。
そういった情報が、なかなか一般に行き渡らないがために
私たちは、日本の素敵なものに出合えないでいるだけなのではないでしょうか。

そこで、この本です。
日本各地にある染織の数々を、「民藝」という括りで、南から北へとピックアップ。
喜如嘉の芭蕉布に始まり、弘前こぎん刺しまで
手仕事の現場を取材し、紹介してくれています。
「教科書」と銘打つだけあって、
そもそも「民藝品」とはどういう物を指すのかから教えてくれます。
そして、私たちが生きる現代において何を民藝と考えるのか、
その基準の考察もうなずけるものがあります。

この本では、今の時代の民藝の染織品の条件を6つ挙げています。
その一番最初にあるのが
「用途と価格において、若者でも手に取れるものであること」です。
染織品に限らず、伝統的な工芸品がこの先も生き残って
人々に使われていくために第一に大切なことだと思います。
従来の「民藝」的な装い(本で例に挙げているのは作務衣とか)というのは、
おばさんである私から見てもダサすぎて、冗談にしか思えません。
カッコいいと思って手に取ってもらえ、これなら買えると思われなければ、
その商品は消えるしかなく、伝統も途絶えてしまいます。
そこで、作り手たちが入り口を広げようと頭を悩ませ
小銭入れやコースターといった小物を作っている例がたくさん出てきます。
それでも、あまりカッコ良くない物がまだまだ見受けられます。
反物やきものだとカッコいいと思える布ですが、小物にしようと思ったとたんに
ありふれた形の中に伝統工芸を当てはめるだけで終わってしまっている物。
そういうものは「これぐらい安いなら買えるでしょ」といった思惑が透けて見えます。
デザインやマーケティングを含めて
総合的に考えてくれるプロデューサーが必要だと感じます。
本書中にもある中川政七商店の花ふきんは、
そういったプロデュースがうまくいった例でしょう。

本書にある民藝織物できものを作るとしたら、
会津木綿から始めるのがいいかもしれません。
縞柄が多く、丈夫で価格も手ごろな反物は普段着にぴったりです。
仕立て代を入れても2万5千円~3万円ぐらいでしょうか。

巻末近くに倉敷本染手織研究所が紹介されています。
20代のころ織りをやっていた私としては、
そこで作られているノッティング織りの椅子敷きに懐かしさを感じます。
自分たちで織った椅子敷きをバッグに放り込み、
友人と国立競技場にサッカーを観に行ったりしました。
トヨタカップが行われる季節は、お尻が寒かったので重宝しました。

ヤタ



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