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琉球布紀行 澤地久枝 著 新潮社
久しぶりに沖縄に行ったことで、沖縄の染織の本が読みたくなった。
そこで探し当てたのが、この本。
まず表紙カバーがいい。
紅型の中でも私が一番好きな、日本民藝館所蔵の一枚だ。
トリコロールに染め分けられた青海波と帆船が、
ダイナミックでありながら、とにかくかわいい。
『琉球布紀行』は著者澤地久枝が2年と50日を沖縄で過ごし、
現地の作り手を訪ねて、直に触れた染織と人々の話だ。
紅型と、沖縄各地で作られる様々な織物。よく選ばれた布たちの写真が美しい。
しかし、この本を染織の本と呼ぶのは少し語弊がある。
沖縄の伝統的な染織を復興させ、守り、育てた人たちの物語だ。
初版が15年前なので、すでにこの世にいない人たちの
在りし日の言葉や様子を残していることも貴重だと思う。
著者が訪ね歩いた伝統的染織の現場。
紅型、首里織、宮古上布、芭蕉布、読谷山花織、八重山上布・・・。
どの染織・織物も一度ならずの衰退の危機を乗り越えて今に伝わるには、
並々ならぬ苦労があったことを教えられる。
そして、どの産地も沖縄戦を語らずにその歴史を伝えることはできない。
これは沖縄の伝統染織を通して、
沖縄戦と戦後を沖縄の人たちが、どう生き抜いてきたかを語る本なのだ。
それぞれの語る、あるいは語らない戦争体験は
とてつもない絶望と恐怖があったことを知らせてくれる。
そこから立ち上がり、伝統を再興させようとしたのは、
「生」への強い欲求だったのではないかと思う。
そして、人と人とのつながりの大切さ。
織りを教えてくれた母や祖母、学校にやってくれた父、
あるいは師匠、仲間、ライバル。
そういったつながりの中で、人は力を得、前に進んでいく。
ジャケ買いした本だったが、 ずっしりと読み応えのある本に出合えて幸運だったと思う。
ヤタ
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15
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