現代の私たちが何気なく着ている衣服、 特に女性の洋服には江戸時代に渡ってきた更紗文様を原型としたパターンが多く見られます。
たぶん意識して求めたのではなく、パターンのおもしろさが現代の感覚にもフィットしたのでしょう。
更紗柄にはそれだけ多くの人たちが無意識に選んでしまうような魅力が潜んでいるようです。
更紗はインドで発祥した多色染め木綿布です。起源については諸説ありますが、 現存するような技法の更紗は14~15世紀に染色が始まったといわれています。
図柄はさまざまありますが、 「生命の樹」(画像1)を中心にした宇宙観を表現するのが主な特徴でしょう。
日本人から見ると不思議な草花や、躍動感みなぎる空想上の鳥獣などを配したデザイン。
しかも、当時、世界のほかの地域では染めることのできなかった、
鮮やかな赤を主体とした色調の更紗は、異国情緒に満ちています。
16~17世紀にはインドにとどまらず、西はペルシャ(画像2)からオランダ、フランス、
イギリスなどヨーロッパへ、東はジャワから日本まで、この鮮やかな木綿布が世界を席巻しました。
日本へは室町時代から、南蛮船の運ぶ輸入品として渡ってきました。
インドオリジナルの更紗だけではなく、 日本からの発注で、日本向けに生産された更紗も大量に入っています。
この時代に輸入された更紗を「古渡り更紗」(画像3)といい、大名たちに好まれ、 茶人や富裕な商人にも愛用されました。
|
画像1(クリックで拡大)
画像2(クリックで拡大)
|