雁
雁はカリとも呼ばれています。秋の彼岸頃に訪れ、春の彼岸頃に帰るといわれる渡り鳥です。
陰暦の8月を「雁来月(がんらいづき)」、9月に吹く風を「雁渡し」とも呼びました。
雁は「幸運を運んでくれる鳥」として知られていますが、その由来は中国の故事によります。
前漢の蘇武という武将が匈奴(中国北方)に軍使として赴いたまま、長い間囚われてしまいました。
十数年たってから「漢の天子の射止めた雁の脚に蘇武からの手紙が結ばれていた」と使者に言わせて交渉し、
それが功を奏して郷里に帰ることができたと言い伝えられています。
この故事から雁は良い消息をもたらす使い、幸せを運ぶ鳥とされ、転じて手紙や良い訪れを「雁書(がんしょ)」と言うようになりました。
また、雁信、雁の便りなどとも言われています。
九月(ながつき)のその初雁の使いにも
思ふ心は聞え来ぬかも (万葉集)
九月になると飛来する初雁の「故郷に戻りたい」という故事のように、私の思いをお察しにならないでしょうか。
都会ではほとんど見かけることはありませんが、
澄んだ秋の大空を一筋になって、こうこうと鳴き渡る雁の群れは見る人の心を動かし、
想いを遠く彼方へ運んでくれそうに見えます。
雁金に星
小紋では点のことを「星」といいます。小紋文様では1列に並んでいる文様は少ないようです。
飛雁
飛来する雁の群れです。
雁金(かりがね)
「雁が音(ね)」とも書きます。雁の飛ぶ姿を意匠化したものですが、
大胆なデフォルメと愛嬌のある表情は江戸の人たちの心を虜にしました。
江戸時代を代表する人気の文様です。家紋にも多く登場します。
結び雁金(むすびかりがね)
上図の文様の雁の体を結びにした大胆な文様です。
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家紋A 雁金 | 家紋B 結び雁金 | 家紋C 尻合せ三つ結び雁金 |
雁の文様は平安時代から少しずつ見られますが、家紋に使われるようになったのは武家に好まれるようになってからです。
前記の「雁書」の話や、秋空を並んで飛んでいく美しい姿などが好まれ、 武家の家紋には様々にアレンジして使われるようになりました。
鳥の家紋の中では「雁紋」は種類が多く人気のアイテムだったようです。
落雁(らくがん)
第6回の文字文様「近江八景」で登場したように、「堅田の落雁」などで有名になった飛来してくる雁の文様です。
どんな良い知らせを運んできたのでしょうか。
落雁
雁は、シベリアから数千キロの距離を旅して、秋の彼岸頃に日本に辿り着きます。
17 October 2012
*このページに掲載されたコンテンツは熊谷博人に帰属します
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