紅葉狩り
江戸時代になると一般の人たちも野外での遊楽に興ずるゆとりができ、秋になると紅葉狩りを愉しみました。
あちこちに名所もできましたが、京都では東福寺境内の通天橋、奈良は龍田川、
江戸では品川の海晏寺(かいあんじ)や目黒不動、浅草の正燈寺が有名だったようです。
女性はお洒落な小袖を着て紅葉狩りをすることが流行の最先端であり、
また、文人や風流者にとっては格好の場所で、和歌などを愉しんだようです。
歌川広重の「海晏寺」の浮世絵には文人が楓の木の下で筆を持っている姿が描かれています。
通天
京都五山の一つ、東福寺の境内にある通天橋には唐楓(とうかえで)の銘木があり、
川の土手には縁台が置かれ、お茶や食事を愉しみました。
この文様は東福寺の扁額のイメージと楓を組み合わせて「通天」と名付けたものです。
龍田川
在原業平の「千早ふる神代もきかず龍田川からくれないに水くくるとは」の句で有名な、奈良の龍田川は紅葉の名所です。
流水と楓の組み合わせ文様は「龍田川」と呼ばれています。ちなみに流水と桜の組み合わせは「吉野川」となります。
小学唱歌『紅葉』の2番は
「渓の流れに散り浮く紅葉、波にゆられて離れて寄って、赤や黄色の色さまざまに、水の上にも織る錦」。
山の紅葉は川の流れに濡れて更に色鮮やかになります。
楓
変化に満ちた日本の自然の中でも、鮮やかに彩る紅葉は特に多くの人たちの心を虜にします。
秋を象徴する小紋柄です。
楓に小菊
秋を象徴する菊と楓の組み合わせ文様。
浪に紅葉葉
渓谷の激流に見え隠れする紅葉。白い波しぶきと紅葉の赤の対比が目に浮かぶ文様です。
浪に陰影を付けずに線のみで表現するのは日本独特の表現方法です。
単純な曲線と楓の形の組み合わせは斬新な感じがします。
霰斜縞に楓と雪笹
秋が深まると突然、紅葉の上に雪が降ることがあります。
ここではその雪を、文様の中でよく用いられる「雪輪」文様で表現しています。
鮮やかな色変化のある紅葉と雪の白も日本ならではの風景でしょう。この光景のあとは一瞬のうちに厳しい冬がやってきます。
やはり紅葉の美しさは、一年最後の華やぎであり、惜別を伴った美しさでしょう。
同じ華やぎでも春の桜とは違い、その美しさの中に、時の移ろいや心情の機微や哀愁を重ねることが多く、
感性豊かな江戸時代の人たちは我々以上に、このことを強く感じたことでしょう。
余談ですが、カエデは、葉の形が蛙の手に似ているので「蛙手」、
後に「カエデ」となったとも言われています。
21 November 2012
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