吹き寄せ
晩秋の強風、野分けの後の吹きだまりには木の葉が積もります。
秋の風情ある光景で、どちらかといえば、もの悲しさを感じる趣です。
しかしこれを、江戸時代の人たちは「吹き寄せ」は「富貴寄せ」と語呂合わせをし、
良いことが集まるという、めでたい文様にしてしまいます。
考え方の転換で文様の意味合いを良い方に替えてしまう素晴らしいアイデアです。
銀杏、楓、蔦、松笠、松葉、などなどが登場しますが、桜の花弁や菊などを加えれば四季を問わずに使える文様になってしまいます。
文様の中には一つないしは、一組の形を連続して並べる「繋ぎ文様」(いずれまとめて紹介します)と花や、
扇など小さな単位の形を全面にちりばめた「散らし文様」があります。
奈良時代などの古い文様は比較的左右対称に文様構成をしていますが、平安時代以後は、散らし文様が増えます。
堅苦しい文様から自由な文様に大きく変わった時代です。
器物(扇や手鞠)の散らし文様も多くありますが、
植物を扱った散らし文様の中では、この「吹き寄せ文様」が代表的なものでしょう。
実際の花や、葉の大きさとは関係なく、形のおもしろさを強調しています。
当然、季節感もなくなるので、一年中いつでも通用する便利な文様です。
余談ですが、秋の茶席にも干菓子で作られたモミジやイチョウなどを
盛り合わせた「吹き寄せ」が人気ですし、日本料理にもこの名称がよく使われます。
日本人はこの手の文様のように、しめやかな感情が好みのようです。
05 December 2012
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