クマさんの文様がたり

前回の「蓬莱山」で登場した鶴。その鶴の文様を見ていきましょう。

鶴が天空を悠々と飛ぶ姿は優美そのものですし、凜とした立ち姿からも穏やかで気品が感じられます。
鶴は江戸時代には江戸でも目にすることが珍しくはなかったようですが、鳥の中では別格の品位の高い鳥とされ、
特に美しい毛並みの鶴は将軍に献上されたという記録が残っています。
東京には現在でも江戸時代から伝わる「鶴の舞」という民俗行事が残っています。
このように当時、鶴は比較的身近にいた鳥でした。

中国の神仙思想では鶴は仙人を乗せて飛ぶといわれ、千年の命を持つともいわれる瑞鳥となっています。
七福神のひとり、福禄寿は常に鶴を従えています。

鶴文様は婚礼衣装には欠かせない文様であり、吉祥文様の中でも特に悦びを大きく表す文様です。
鶴文様を身にまとうとしたら、写実的な鶴文様は晴れやかな日のみでしょうが、小紋ならば比較的気軽に着ることができるでしょう。

雲鶴(うんかく)

雲鶴(うんかく)

長寿の瑞鳥である鶴が霊芝雲(れいしうん)といわれる瑞雲の上を優雅に舞う姿は
吉祥文様の中でも特に品格が高い文様とされ、礼装等に多用されます。

舞鶴

舞鶴

飛翔する鶴の美しさを意匠化した文様ですが、「飛鶴(とびづる)」ともいいます。

菱に鶴

菱に鶴

菱形の格子の中に、これ以上単純化できないというほど、シンプルにした鶴を天地交互にはめ込んだ文様です。
目を遠ざければ幾何学文様に見え、さりげなく吉祥を願います。

向い鶴菱

向い鶴菱向い鶴菱

菱形の枠の中に雌雄の鶴が向い合った形で納められています。
「向い文様」は生命の誕生を祈念する吉祥文様の基本パターンであり、他の動物にも当てはめられます。
江戸小紋の中でも品格のある文様として愛されていました。
右側の文様も「向い鶴菱」ですが、「麻の葉」の菱形に二羽の鶴が向き合って、パズルのような緻密な文様です。

菊鶴(きくづる)

菊鶴(きくづる)

邪気を払い延命長寿の花とされる高貴な菊の花を、長寿の象徴とされる鶴の羽に見立てた文様です。
鶴の白と白菊の組み合わせとも見え、めでたくもあり品格の高い文様であり、見立て文様の代表ともいえるでしょう。

一筆鶴

一筆鶴

一筆書きの鶴。、一筆でこれだけシンプルに鶴をデザイン化する力量は、心憎いほどの腕前です。
現代でも十分通用する文様だと思います。
古い型紙を原稿にしているので汚れがあります。悪しからず。

鶴丸

松葉風

JALのマークでお馴染みですが、これも同種の丸文様です。
文様を円の中におもしろくまとめ上げるという技術は日本人が得意とするところです。
家紋のデザインから伝わった感覚でしょう。

「文様がたり」第1回に紹介した「梅鶴に松葉」も松葉をうまく使った文様です。
もう一度見直していただければうれしいです。

23 January 2013

*このページに掲載されたコンテンツは熊谷博人に帰属します

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