クマさんの文様がたり

竹 - 2

竹文様は古くから伝わる物語とも関係が深い。
平安時代にできたと言われる竹取の翁が登場する『竹取物語』、
「寄りて見るに、筒の中光たり、それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり」。
竹から生まれたかぐや姫の物語はいつの時代にも親しまれた物語です。竹の節と節の空洞には霊力があるといわれます。

『舌切り雀』、雀の宿は竹林。このおとぎ話の原型は、鎌倉時代の説話『宇治拾遺物語』の『腰折れ雀』とされます。
このことから、竹文様には雀との組み合わせが大変多く使われています。

竹に雀

竹に雀

竹に雀

「舌切り雀」のおとぎ話からも竹と雀の組み合わせ文様は多く見られ、誰からも愛された文様です。

筍

筍という文字は10日間を意味する「旬」からきています。
地上に頭を出してから10日目には立派に成長したタケノコになっているということですが、
この生命力には誰しも憧れるところです。でも食べるのには黄色い頭を出した頃に掘り出すのが一番。

竹の節

竹の節

竹の節と節の空洞には神秘的な霊力が宿るといわれています。
この文様は竹の節だけを強調した面白い文様となっています。

切竹

切竹

竹の一節だけを強調した文様です。一節竹(ひとよだけ)ともいいます。
江戸時代の百科事典「人倫訓蒙図彙」には「一節切」という尺八の名器のことが記されています。
これが粋人の間で人気となり、文様として広がったとも言われます。

竹垣

竹垣

今では寺などでしか見られなくなった竹垣です。
竹垣の幾何学的な直線と、透かし垣の間から見える竹の葉の曲線の組み合わせが心地よい文様です。

竹矢来(たけやらい)

竹矢来(たけやらい)

竹矢来(たけやらい)

矢来垣ともいいますが、竹を粗く交差させて組んだ垣根のことです。
竹の幹を強調し、男性好みの面白い文様構成になっています。江戸っ子の大好きな大胆で威勢が良い文様です。

話は変わりますが、竹のつく漢字には、箱、箸、箒(ほうき)、笏(しゃく)、筆、箱、などなど
竹から作られたものが多く見られます。
ついこの間まで、台所には、様々な用途に合わせた箸やざる、柄杓、籠、などがあり、
また、茶道具や、花入れ、箒や、熊手、そして多くの農具、漁具、建材から遊び道具の竹とんぼや、竹馬まで、
竹は我々の生活にはなくてはならない素材でした。
これらのものが、昭和30年代から一気にプラスチックなどの化学製品に代わってしまい、
大量に消費され公害を起こす要因ともなってしまいました。
ここでも生活の便利さをどこまで欲望するのか、考えさせられます。
再生可能製品や、リサイクルの問題を考え直すには、もう時間がないところまで来てしまいました。

06 February 2013

*このページに掲載されたコンテンツは熊谷博人に帰属します

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