梅
植物文様のなかでは梅文様は桜より古くから親しまれてきました。
梅の原産地は中国で、熱冷まし、下痢止め、腫れ物等の薬用として奈良時代に日本に輸入されています。
その薬は色が黒いので烏梅(うばい)と呼ばれました。
当時の梅は小輪の白梅で、宮廷や貴族に愛された特別な花として扱われたようです。
奈良時代の『懐風藻』や『万葉集』、平安時代の『古今和歌集』には梅の漢詩や和歌が数多く載るようになり、
以後一気に日本人の心を虜にする日本人好みの花となっていきました。
若い枝は成長が早く天に向かって伸び、その生命力には驚かされます。
愛らしい花は、春のさきがけとして高雅な香りを添え、やがてたくさんの実を付け、これは子孫繁栄の象徴ともいわれました。
また、尾形光琳の『紅白梅図屏風』のように、苔むす古木に咲く梅の花は、特に日本人好みの姿でしょう。
旧暦の2月は、別名を梅見月、梅つ月とも呼ばれます。
江戸時代には亀戸の梅屋敷を始め、隅田川、蒲田、四谷新町などに人気の高い梅林があり、多くの人たちが梅見をしていたようです。
しかし、私は、春にさきがけて楚々と咲く梅の花はひとり静かに眺めるのが好きです。
立派な古木に咲く梅も良いですが、我が家の庭の片隅にひっそりと一輪ずつ咲き始める梅を眺めるのも良いものです。
そう言えば、梅干しや梅酒を作らなくなってもう何年にもなります。 今年はなんとかトライしたい気もありますが…。
重ね梅
冬の寒さをしのぎ百花にさきがけて咲く梅は、
かぐわしい香りを漂わせる気品の高さから高貴な花としてこよなく愛されています。
この図は早春の寒気のなか、凛々しく咲く満開の梅の姿です。
網代に捻梅(ねじうめ)
捻梅は花弁が捻れた形ですが、この時代は「捻り文」が流行しました。日本人が考案した見事なアイデアです。
網代は檜垣ともいいますが、この形が薄板で編んだ垣根の模様に似ているところからつけられた名称で、
織物の地紋として用いることが多い文様です。
槍梅
真っすぐに伸びた枝に蕾と花をつけ、凛とした生命力の強さを表現した、代表的な梅文様です。
文様としては槍のように一直線に伸びた枝に見たてた文様です。
氷割梅(ひわりうめ)
氷割文様は氷が割れてできる時の亀裂を意味しますが、梅との組み合わせで、
春まだ浅い寒中に芳香を添えて咲く梅のイメージです。
当時の人たちの文様に対する思いの奥深さを感じます。
高貴な梅文様も江戸時代には庶民の文様になり、バリエーションが広がりました。
来週も梅文様とお付き合いください。
13 February 2013
*このページに掲載されたコンテンツは熊谷博人に帰属します
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