江戸時代に木綿に色鮮やかな染めが出現し、やがて一般の人たちにも普及した和更紗。
この更紗はどんなものに使われていたのでしようか。
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1 「雲龍打掛の花魁」 渓斎英泉
ゴッホが模写したことで有名な浮世絵『雲龍打掛の花魁』、
この渓斎英泉の版画でもわかるように
「間着(あいぎ)」として使われることが多かったようです。
水を通すと色落ちがする和更紗は、
あまり洗濯をしないものに使われました。
間着は上に着る打掛や下着に比べれば汚れが少ない。
さらに、和更紗の色鮮やかな間着が
打掛の下からチラリと見えるのは、
お洒落のポイントになったことでしょう。
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千葉市県立美術館蔵
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2 藍地唐花文様更紗夜着
仮縫い未使用の夜着。
文様の青い色の部分は18世紀初頭にドイツで出来たプルシアンブルー顔料です。
江戸時代には日本にも大量に輸入され、絵画や浮世絵に使われています。
ドイツから渡ってきた顔料なので「ベルリン藍」、または「ベロアイ」といわれ、もてはやされました。
堺ではこの顔料を染め物に使い、堺更紗の特徴となっています。
植物の藍染めよりは色が濃く、鮮やかなので大柄な更紗文様にはメリハリをつける大きな効果がありました。
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3 白地小花文様更紗間着
小紋と見間違えるほどに小さな文様の更紗です。更紗の中でもこれだけ細かい文様は少ないでしょう。
小さな文様は黄、赤、緑の原色ですが少し離れると明るいグレーにしか見えません。
見る位置で文様や色の変化が起こり、隠れたお洒落効果を出しています。
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4 鼠地人物文様更紗間着
江戸時代の有名な風俗画を更紗文様に流用した明治時代の更紗です。
明治時代になると日本的で、誰でもわかる文様に変化していきます。
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5 白茶地花文様更紗胴衣
ガーゼのような目の粗い木綿生地で作られています。
このような木綿が江戸時代にどこで生産されたのか、明確にはわかっていませんが、
相当量作られていたことは確かです。
実際に着てみると、中に真綿を入れているので暖かく、しかも軽いのでユニクロのダウンベストと変わらない感じです。
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6 濃茶地蝶文様更紗道中着、黄土地宝尽くし文様更紗道中着
道中着というと「木枯し紋次郎」の縞の道中着を思い出しますが、こんなお洒落な道中着がありました。
女性用かもしれません。
中に油紙を入れて防水も考えられています。
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7 白地花入り丸文様更紗掛け布団
ほかには、掛け布団の布団皮として多く使われていました。
現在、骨董屋さんなどで扱っている古い和更紗はほとんど、この布団皮です。
4巾を繋ぎ、四方を濃い色の布で縁取り(この部分だけ外して洗濯をします)一枚の掛ふとんが出来ます。
色鮮やかな和更紗の布団を掛けて眠れば、楽しい夢が見られるかも。
客人用に使われたものも多く、未使用の布団皮が骨董屋さんにあるのを見ると、
普段使いのほかにも客人のもてなしとして用意していたことがわかります。
炬燵掛け、座布団にも使われています。
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