七夕 星
先月、梅雨の晴れ間に露天風呂で眺めた星空は、高原の露天風呂ということもあり、見事なものでした。
改めて空にはこんなに星があるのかという思いです。
久しぶりに高原で空を見上げると、普段の生活ではつい忘れていることに気づかされます。
金子みすずの詩にあるように、「見えぬけれどもあるんだよ」。
旧暦の7月7日は七夕。これも五節句の一つ。中国から伝来した、牽牛織姫の二つの星を祭る行事。
それぞれに耕作、蚕織をつかさどるとされ、
女性の針仕事や、機織りの上達を願う「乞巧奠(きっこうでん)」と習合したものと考えられています。
七夕は、「棚機(たなばた)」「棚幡(たなばた)」とも書かれています。
お盆の精霊棚とその幡を安置するのが7日の夕方から。
そこから「七夕」と書いて「たなばた」というようになったといわれています。
子どものころは、早起きをして、里芋の葉に溜まった露をコップに集め、硯に入れて墨を摺りました。
慣れない筆で願い事を短冊に書き、これまた、慣れないコヨリを短冊に付け、笹に縛り付けます。
七夕飾りの前には、茄子やキュウリで作った馬や牛などを供え、裁縫や書道の上達を願います。
普段の生活とは違ったことばかりで、とても新鮮な気持ちで、待ち遠しい行事でした。
本来は、短冊の5色は古代中国の陰陽五行説の緑・紅・黄・白・黒をいいます。
そして、梶の葉に和歌を書いて手向けました。
江戸時代の百科事典ともいわれる『守貞漫稿』には
「七月七日、今夜を七夕という、今世、大坂にては、、、太鼓など打ちて終日遊ぶこと也。
江戸にては、、、青竹に短冊色紙を付け、高く屋上に建てること」と書かれています。
歌川広重の「市中繁栄七夕祭」を見ると、青竹の七夕飾りが空高くなびいています。
青竹には、瓢箪、盃、西瓜をかたどったものなどが、賑やかに付けられています。
七夕はこれとは別に、民間では盆の行事のひとつと考え、
病気や稲の害を及ぼすものを追い払う行事でもありました。
七夕飾りは、これらの災難を取り払うために、川に流します。
七夕
7月7日の七夕には、願い事を書いた、色とりどりの短冊や色紙を、笹竹に飾り、高々と掲げます。
7月を「文月」というのは、七夕の短冊に文字を書くことが語源だといわれています。
七夕の短冊には、書道の上達も願います。
色紙短冊
七夕飾りのイメージの文様。当時の色紙は四角だけではなく、扇形や丸など様々な形がありました。
笹に切子
「切子」は「切灯籠」のことで、四角の角を切り落とした切子形の灯籠のこと。
花飾りなどの飾り物を付け、竹竿の先きに高々と捧げます。盂蘭盆会には諸大名は菩提所に切子灯籠を奉納しました。
七夕そのものの文様は少ないので、今回は、「星祭り」ということで星文様を紹介しましょう。
しかし、文様の世界で、いわゆる五角形の星形はほとんど見かけません。
光り輝くもの、日・月・星を総称して「曜」と呼び、丸印で表現されていました。
中国の陰陽五行説を基にした「陰陽道」が平安時代に盛んになり、星文様が家紋にも使われ始めます。
九曜繋ぎ | 菊に九曜繋ぎ |
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太陽と月、そして、火、水、木、金、土の惑星を七曜と呼びます。
それに実在しない羅[目侯](らご)と計都(けいと)を加えて九曜。
九曜は天地四方を守護すると信じられ、厄除けとなります。右の文様は中央に、菊文様を入れています。
井筒七つ星
井筒は井桁と同じですが、正方形のものを井筒、菱形を井桁ということが多いようです。
井戸の木枠形からきた名称です。生活にもっとも必要な水との関わりから、こんな文様ができています。
三つ星
本来の星ではなく、三つの点を単位とした文様です。染め物などでは、このように、点を星ということがあります。
他の年中行事もそうですが、七夕のような風習は自然との関わりが大きいので、我が家では、七夕は旧暦でやっています。
梅雨が終わらないうちの七夕では、どうもピン来ません。
少しずつでも、旧暦を見直し、大自然のリズムに、人間が合わせることも必要ではないでしょうか。
03 July 2013
*このページに掲載されたコンテンツは熊谷博人に帰属します
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