秋の収穫 大根
今年は大雨や、猛暑の影響で、米や野菜、果物などが秋の収穫前に、大きな打撃を受けたことだろうと思います。
自然の計り知れないパワーと、それに対抗する人間の力の差を見せつけられましたが、
所詮自然に対抗しようなどというのが無理なことで、
起きうる現象を受け入れる覚悟をし、その上での対策と準備が必要なのでしょう。
秋の収穫といっても、品種改良、ハウス栽培などの環境作りにより一昔前から比べると、
収穫期は大幅に広がり、いつが旬なのかわからなくなってきた物も多くあります。
人間の知恵といえばその通りでしょうが、しっぺ返しが怖くもあります。
大根
子どもの頃には、毎年、大根掘りの手伝いをしたものですが、山の畑の大根は、畑に石が多く、
二股や、曲がってしまったものなど、思わず笑ってしまうような形の大根が何本もありました。
土を拭って、そのままかじってみると意外に甘く、驚いた記憶があります。 江戸時代の文様に登場する大根も二股が多いようです。
江戸時代の八百屋には二通りあり、ひとつは前裁(せんざい)売り、ひとつは八百屋と呼んでいました。
前裁売りは瓜、茄子、小松菜ぐらいを前裁籠に入れて行商していました。八百屋は季節の物を何でも扱っていました。
大根売りは産地の練馬、板橋、浦和などから馬の背に乗せて、江戸の町に売りに出ていました。
江戸では、練馬大根、亀戸大根がよく採れました。
生なら、おろし、塩もみ、ぬか漬け。また、煮たり、ゆでたり、炒めたり。
葉はみじん切りにして、ふりかけるなどして全て食べられました。
現在よりもレパートリーは広かったといわれています。
しかも大根は安価なので、庶民の冬の食卓には欠かせない代表的な食材でした。
大根
大根は中央アジア原産ですが、『古事記』(712年)に「木鍬(こくわ)持ち打ちし大根(おおね)」と詠われているので、
奈良時代以前には日本に渡って来ていたと思われます。
大根とおろし金
大根おろしは消化を助け、胃に優しく、食あたりを防ぐので「難に当たらない」。
また、「大根をおろす」は、「大根役者を下ろす」、さらに「厄を降ろす」、「厄除け」の文様となります。
こちらはかなり強引ですが、語呂合わせ好きな江戸の町人たちのあいだでは大人気になり、
現在でも、ユーモアを解する御仁はこの文様の着物を好んで着ています。
蕪
蕪の成長は早く、勢いよく繁る葉と、丸く、たくましく太った根から、
蕪文様に家運繁栄、家族円満、無病息災を願う意味合いを持たせました。
さらに、賭け事の、めくり札の最高位「九」や、頭領を「かぶ」といったり、
株仲間からも「かぶ」は縁起が良いとされ、蕪文様はもてはやされたようです。
能の衣装には大きな蕪文様を使ったものが見られます。男性好みの文様でしょう。
五穀豊穣
五穀とは一般には、稲、麦、きび、粟、豆を指します。最近では五穀米に人気があるようです。
この間まで見向きもしなかった食材に興味を持つように、価値観が変わってゆくのはおもしろいものです。
日本のこれからの農業が、どのようになってゆくのか気がかりです。
自分が子どもの頃の食べ物に比べれば、現在はコンビニなどに行けば何でもそろい、
食料事情は夢のようですが、悲しいことに自給率は遙かに低くなってしまいました。
農業は物作りの原点でもあります。そして重要な文化だと思います。
日本の農業が政治家の、その時々の都合で、何度も方向転換させられるのはごめんです。
06 November 2013
*このページに掲載されたコンテンツは熊谷博人に帰属します
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