縞
「縞」は、江戸の町人たちから生まれた美学「粋」の代表的な文様です。
「縞」という文様は1本1本の線の太さや、間隔だけでも感じ方が大きく変化する微妙な文様です。
きりっとした緊張感で粋になり、しなやかな柔らかさで色気を出し、力強さ、リズミカルでスポーティーな表現など様々です。
江戸では「着物は縞に始まり縞に終わる」ともいわれていました。
ちなみに京都では「友禅染め」が人気の主流でした。
友禅は写実的な文様、江戸では抽象的な文様「縞」が粋とされ、人気がありました。
縞は、現在では「縞」と書きますが、古くは「織筋」と呼ばれていました。
江戸時代の風俗誌『守貞漫稿(もりさだまんこう)』には、縞について、
「昔は織筋と云ひ、今はしまと云ふ。しまには島字を仮用す。昔の織筋は横を専らとして、また大筋多し。
今の島は竪を専らとし、また大なるありといへども、男女の衣服には細密を専用とす」と書かれています。
このように、南蛮貿易により、遠い南方の島からから渡ってくる織物の柄を、「島物」といい、
筋織、島渡り、奧嶋(おくじま)、間道(かんとう)、唐桟(とうざん)、などといわれていたようです。
唐桟はインドのマドラス(現在のチェンナイ)の港町セント・トーマスからもたらされた織物。
セント・トーマスがなまって「サントメ」となり、舶来品を意味する「唐」が頭について、「唐桟留」と呼ばれました。
唐桟留の略称で「桟留縞(さんとめじま)」といい、南蛮船により17世紀頃から渡ってきた綿の縞織物。
縞文様や小紋が普及するようになったのは享保年間(1716~1735年)頃からといわれています。
特に、松平定信が行った「寛政の改革(1787~1793年)」以後に盛んに使われるようになりました。
質素倹約が浸透し、閉ざされた時代でしたが、そういった制限の中でこそ、職人の自由な発想が発揮され、
考え抜いた表現手段のひとつが、単純な縞文様での染めであり、一色染めの小紋です。
衣服の文様が地味で技巧を凝らしたものへと変わって行った時代です。
名前のついた縞の種類だけでも、100とも200ともいわれるぐらいバリエーションが多く作られました。
そして、江戸時代には、八丈縞、上田縞などの縞織物が多くの地方でも生産されました。
極毛万(ごくけまん)
髪の毛ほどに極めて細い筋という意味合いです。
単純ですが、これだけ細かな線を着尺幅(約36センチ)に全く乱れがないように彫れる彫り師は現在では数人だけです。
しかも型紙は6~7枚重ねて彫ります。こういった単純な型ほど神経を使います。
三重県インターネット放送局 / 伊勢型紙・江戸小紋記録映像
動画の真ん中あたりで縞彫りの様子が見られます。
渡りの縞は織物ですが、江戸時代の型染めの進歩で縞物を染めで行うようになりました。
一・三筋
三本と一本の単位の縞。文化10年刊行の『都風俗化粧伝』には背を高く見せる方法として、
「縞ならば立縞か立筋の勝ちたる縞よし。横の勝ちたる縞模様も、横に平たき模様は悪るし」と書かれています。
子持縞
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矢鱈縞(やたらしま)
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太い筋と細い筋で「子持ち」といいます。
不規則な太さの筋で構成する矢鱈縞。でも、こんな名前がつくと、それはそれで粋なもの。
手綱
斜めの縞を「手綱」といいます。馬の手綱からできた文様です。左から右下に流れる斜め縞は「左手綱」といいます。
よろけ縞・養老筋(ようろうすじ)
ゆがんだ縦縞を「よろけ縞」といいます。
また、滝の水が酒になったという、親孝行伝説の「養老の滝」のイメージから「養老筋」の名もつけられました。
間道(かんとう)
間道という縞文様があります。室町時代に中国、南方諸国から舶載した布で、茶人に好まれ、茶道の名物裂になっています。
主産地の中国広東地方にちなんだ名称といわれています。
当時は青と白の筋を間道と呼んでいたらしいのですが、後に縞織物を総称して間道という場合もあります。
船越間道
この図は大正時代に龍村平蔵が復元した、名物裂のひとつです。
船越の由来は織部遠州に茶道を学んだ船越伊予守五郎衛門が所持していたものといわれています。
縞、ことに縦縞は見るからにすっきりして粋な文様です。
しかし、着る者にとって、これほど難しい柄も珍しいでしょう。
立ち居振る舞いによって粋にも野暮にもなる不思議な柄です。
私も、いずれは濃茶の縞柄の着物を着こなせるようになりたいものです。
体型だけは着物が似合いそうな太った体ですが、立ち居振る舞いは日頃の行動からして、とても難しい限りです。
13 November 2013
*このページに掲載されたコンテンツは熊谷博人に帰属します
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