クマさんの文様がたり

寒くなってくると、おじさんたちは「縄のれん」が恋しくなります。
しかし、この庶民的な居場所も最近はめっきり少なくなり、懐かしい風景になりつつあります。
今回は江戸時代に作られたであろう「縄暖簾」から「縄」文様にしました。

縄は蔓植物や草類をそのまま用いて作られ始めたのでしょう。
その後、麻やシュロなどの植物の繊維を撚り合わせた紐が考案されました。
古くは縄文式土器の文様付けに使われていたのですから、歴史は古いです。
縄は物を縛るために使われることが一番多かったのですが、結縄(けつじょう)という記録法に使うことがありました。
文字をもたない時代には縄の結び方や結び目の数などによって数量を表示したり、記録の手段として使う方法です。
縄の応用範囲はこのように広く、この発明は人類にとって、文化を支える大きな道具でもあったともいえるでしょう。

米作りが盛んであった我が国では、収穫した後の稲わらから、藁縄を作り、紐として使われ、
また、むしろや袋物,縄梯子、そして縄のれん、などの生活道具、
それに「しめ縄」のように宗教的な飾り物にも多用されています。
多くの人が常に使う履き物に「わらじ」がありました。
藁縄を編んで作りますが、現在では布製の草履が民芸土産として人気があるようです。

子どもの頃、藁草履を作る年寄りの横に座ってできあがるのを飽きずに眺めてた記憶があります。
数本の藁が年寄りの武骨な手のひらの間でどんどん縄になり、やがてきれいな草履に変身してゆくのは驚きでした。
5、6年生になって爺さんに縄の編み方を習ったのですが、
数本の藁はばらばらに捩れるだけでまとまった縄にはなりませんでした。
爺さんの手業に感心しただけで、結局縄をなうことはその後トライしていません。
このように稲作から二次的に生まれた藁縄は、一気に庶民の生活道具に欠かせない素材として普及しました。
そして使い切った藁縄は灰となって消費され、江戸のエコロジーの代表的なアイテムとなっていました。

手繰縄(たぐりなわ)

手繰縄(たぐりなわ)

手繰縄(たぐりなわ)

縄は物をつなぎ止めたり、引き寄せる時に多く使われます。
文様では「幸せを手元へ手繰り寄せる、引き寄せる」という意味合いで使うことが多く、縁起の良い文様のひとつです。
縄文様は大胆な構成が自由にでき、力強く男性好みの文様ですが、
細いひもを花や蝶などにし、明るい色使いにすれば女性好みにもなります。

縄目縞
縄目縞 縄目縞

縄の撚りを強調したような縞。縄は撚りをかけることで紐としての強靱性が増します。

錨

錨(怒り)を縄で縛る。怒りを抑え、鎮めるの寓意文様。
馬が暴れないように願い、馬の胴巻きなどにも使われた文様です。
「錨と縄」文様は人気がありバリエーションが多く見られます。

縄暖簾

縄暖簾

江戸時代には酒も飲めれば飯も食べられる、両方を兼ねている店を「縄暖簾」といったようです。

今夜は「縄のれん」を出たとたん、酔いが回ってチドリ足。ヨッテ、来週は「千鳥文様」にいたします。

04 December 2013

*このページに掲載されたコンテンツは熊谷博人に帰属します

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