クマさんの文様がたり

初釜

年始めの『茶の湯』を初釜といいます。晴れ着姿で華やかな雰囲気の茶事なのでしょう。
私は不作法で正式な茶会の経験がありません。いずれ、いずれと思いつつ、今日になってしまいました。

お茶を飲む習慣は平安時代からといわれています。
いわゆる「佗茶」は室町時代に村田珠光が、亭主と客との精神的交流を重視する茶会を行い、
その後、堺の町衆である武野紹鴎、その弟子の千利休によって安土桃山時代に完成されたといわれます。
大名や豪商らが中心の限られた人たちの間で開かれる茶会で、
「大名茶」とも呼ばれ、大名にとっては大切なたしなみとなっていました。
その後、江戸時代の初めには寺社の門前や、花見や紅葉の名所では抹茶を売る「一服一銭」の姿が見られました。
お茶は中国から伝わった当初、薬として用いられたので「一服」と数えるようになったようです。
寛永年間(1624年から)には畿内(近畿地方)に茶の産地が生まれ、なかでも宇治は有名でした。
ちなみに「茶壺に追われてトッピンシャン」という歌は宇治から江戸の将軍へ献上する茶壺のこと。
「茶壺道中」は500人余の行列だったそうです。これで街道筋はもとより、話が広がり、一気にお茶が話題になりました。
町人の間では憧れや見栄もあり、茶の湯をたしなむ人や道具に凝る人が急速に増えました。

茶事は茶碗に始まり、茶道具や茶室の床の間の掛け軸は茶道を構成する要素であり、
茶事が進行する時間がすべて総合芸術という解釈もあります。
心得のないものには気が重い話。そこで、気軽というと語弊があると思いますが、
作法が比較的簡単に楽しめる「煎茶」が普及しました。
しかし、煎茶も茶葉の種類も膨大で「煎茶道」を極めるのは大変そうです。

「茶道具文様」は道具の種類が多く、形にも特色があり、文様の変化がつけやすいうえ、
茶事への憧れも加わって、品格の高い文様とされ、多くのバリエーションを作り出しました。
茶道具を大きく拡大した、藍の筒描き染めの暖簾は骨董市で、時々見かけます。
私の仕事場では、恥ずかしながら物置部屋の暖簾として使っています。

茶の湯

茶の湯

茶の湯

「茶道具尽くし」ともいう、茶道で使う道具、釜に柄杓に五徳、棗(なつめ)、
それに茶筅と茶碗。鳥の羽は炭道具の一つで「羽箒」といいます。
茶道具には大枚をはたく輩も大勢いました。

茶の湯

茶の湯

武家社会を中心に確立した茶道も、やがて町人のものへと大衆化して、町人文化の一つとして定着しました。
当然「茶の湯文様」は、お茶をたしなむ人も、そうでない人たちにも、一気に人気の文様として普及してゆきました。

茶筅

茶筅

茶筅

茶筅は、茶道において抹茶を点てるのに使用する道具ですが、竹の先を細かく割って穂とし、穂先を内側に曲げます。
竹の豊富な日本で、日本人の繊細な技術が作り出した道具です。

仕覆尽くし 五徳
仕覆尽くし 五徳

仕覆とは、茶入れや、茶碗などの道具類を入れる袋です。
茶入れの仕覆には、名物裂や古代裂といった貴重で高価な布を使用します。
茶席では茶入れ、茶杓などと共に仕覆も客の拝見に供されます。
五徳は、炉の炭の上にかぶせ、茶釜を載せる器具。
こんなものまでというと、五徳に失礼ですが、興味のあるものはどんどん文様にしました。
五徳の語源は「竈子(くどこ・くとこ)」や「火処(くど)」といわれていますし、
重宝する器物ということで五つの徳がある物という説もあります。
調べるとさらに他にも多くの説があり、本当のところどれが正しいのか解りません。
火鉢や囲炉裏などでは丸いほうを上に使いますが、茶道では炭手前がしやすいように爪のある方を上にして使います。

日本人ならば、お点前の稽古をと思っているうちに、最近は正座もままならず、
まずはダイエットをして、正座ができるような体にしてから…。茶事に出られるのはいつのことやら…。
我が家の茶事は、老夫婦が炬燵に入って飲む「番茶」が毎晩の習慣となっております。
たまには抹茶を点てますが、胡座をかいてリラックス茶。茶よりも茶菓子が気になります。

15 January 2014

*このページに掲載されたコンテンツは熊谷博人に帰属します

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