クマさんの文様がたり

七宝

日本的な文様に見えたり、オリエント風な感じもする「七宝(しっぽう)」文様。
なぜこの形が、「七宝」なのか? 今回は幾何学文様のジャンルに入る「七宝文様」。
七宝文様は、大きさが同じ円を4分の1ずつ、上下左右に移動してできる幾何学文様です。
四方へ無限に広がることから、永遠に継続して絶えないという意味合いと見て、吉祥の文様となっています。
日本では、「宝尽くし」の一つとして頻繁に使用されてきました。
ではなぜ、この形が「七宝」なのか。
「四方」に伸びるの「四方」が「七宝」に変化したという説や、
七宝という呼び名は、東西南北とその四隅および天地、合わせて十方
それがなまって、七宝になったという説など、諸説あります。
仏教では、七宝(しちほう)は、
金、銀、青玉、水晶、赤真珠、瑪瑙(めのう)、琥珀の七つ(諸説あります)の七つの宝物を表します。
大陸から七宝(しちほう)の教えが仏教とともに入り、
音の似た七宝(しっぽう)文様が吉祥柄として宝尽くしの文様に仲間入りしたのでしょう。
この文様は輪を重ねる文様なので「輪違い」と言っていました。
図形自体は古くはエジプトの壁画にも見られ、シルクロードを渡り、中国を経て、
7~8世紀に日本に伝わったといわれています。
正倉院宝物の「七宝文錦」はペルシャで生まれた文様に関連があり、西方から渡ってきた文様と見えます。
平安時代の公家装束や調度品にはこの七宝文様に
様々な文様が加えられ、複雑に考案されて、使われています。
有職文様の「鳥襷(とりだすき)紋様」は今でも唐紙の文様として使われています。

「輪繋ぎ」文様ともいわれています。
「輪」と「輪」を「和」に変えて「和繋ぎ」と、これも語呂合わせで、めでたい文様ということ。
七宝の中心に花を入れて「花七宝」、七宝が部分的に欠けたものを「破れ七宝」といいます。

七宝

七宝

七宝 極七宝、小形輪違い
七宝 極七宝 鬼蔦と松皮菱
七宝 霞七宝 菊入り七宝
七宝 極七宝 菊入り七宝
花七宝 花七宝
花七宝 花七宝

六方輪違い

六方輪違い

「七宝」の変形。

このように江戸時代以前には七宝を基本とし、
複雑な文様を加えて豪華な吉祥文様としているものが多く見られます。
江戸時代になり型染めの技巧ができると、七宝文様は純粋な幾何学文様からの変化を工夫するようになり、
庶民の使える吉祥文様として変化してゆきました。
めでたい幾何学文様は需要も多かったと見え、文様のバリエーションも多く、
図案師、彫り師の腕の見せ所。味気ない幾何学文様がめでたい意味合いと結び付くと、
文様そのものが生き生きと見えてくるのは不思議なものです。
最近では七宝文様が女性の高級革バッグの文様として使われ、海外でも人気があるようです。

20 August 2014

*このページに掲載されたコンテンツは熊谷博人に帰属します

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